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俳句集

2015年7月の句

心太(ところてん)

選者 桐本石見

若草山友と味わう心太

おの

奈良の若草山は三十三町歩、高さ三百四十Mの野芝の山で三笠山、鶯山とも言われ、昔に、東大寺と興福寺の領地争いで山を焼き仲直りした事で今も山焼きが伝わるとも。修学旅行で訪ねたのも懐かしいが、 心太を食べながら奈良の街を眺めるのも旅情が深まる句です。

心太ちゅるるるるんああすっぺ

ギン

心太は中国からその製法が伝わり奈良時代には天草が正倉院に納められた記録があり、宮中の節季行事に食されたとのこと。江戸時代には庶民にも広がり夏の涼感を呼ぶ間食とされた。句の表現も実感の詠で涼しさを呼ぶ。

昼下り一人長閑に心太

レイコ

一人住いか、あるいは夫や子供達が出掛けた午後の一時一人のどかに心太を食べるのも心の休まる思いです。「九十九里ひとり長閑に心太」でも景の見える句になります。

ダイエット心置きなくもう一つ

さゆり

飽食の時代になり女性も男性もダイエットに苦心しますが、戦後の食料難を思えば幸せかも。心太の成分は殆どが水なので最近はこれを使った食品も多い。面白い句です。

携帯へ咽ぶを詫びつ心太

ゆたか

旅先の店かも、心太を食べていると電話に少し慌てて咽る、相手に失礼を詫びつつ話す、慌てて心太を飲み込んだ顔が浮び俳諧の実感の句です。

親子旅伊豆の茶店の心太

大友

原句に伊豆を入れて景の見える詠にしました、これで伊豆の何処かの店で遠くの島や青い沖を見ながら親子での楽しい思い出の句にもなります。 私も伊豆は何度も訪ねて懐かしく、「万緑を見渡す十国峠かな」の句もあります。

縁台の将棋手を止め心太

ヒロ

今では縁台将棋もあまり見かけませんが。昔の大阪の下町では夏に良く見かけました。年寄り仲間も良いが親子の姿も微笑ましく、また子の方へ応援する近所の人も多かった。差す手を止めて心太を食べるのも風情がある懐かしい句。

縁側に座布団二枚ところてん

いしだ

今では広い縁側のある家は少なくなりましたがこの鹿島辺りではまだありますし、最近の家も狭い縁があります。座布団二枚は夫婦か親子か、休日の午後庭でも眺めながらの心太は美味い、微笑ましい景の句です。

心太逃ぐる追っかけ箸走る

おに

心太は寒天質なので箸でつかむより掬う様にして食べるが、それでも逃げる、大人の仕草より子供を想います。箸も割り箸の方がよい、子供なら可愛い景の句です。

心太思ひつ木々の昼の雨

アオ

原句は少し変えましたが、これで木々に降る雨に心太を思う景になります、雨は年中降りますが、 夏の昼の雨には白を、春は薄緑など連想しますし、夕立など白雨とも言います。

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