2015年6月の句
6月の花
船頭の小唄聞きつつ花あやめ
みく
潮来の前川から対岸の十二橋へはあやめ舟の娘船頭さんが櫓を漕ぐのが昔の渡しであった。その船頭さんの小唄を聞きながらあやめの花を賞でるのも旅情が深まる。そもそも昔の潮来はサッパ舟で州の田や家を行き来していたのが今の観光にもなった。花村菊江の潮来花嫁さんが懐かしい句です。
花あやめ孫も十五のべっぴんに
いしだ
大方の花は女性を想像させる、あやめの花は少し大人の女性を想うし、女の子も十五歳になり着る物よっては胸の膨らみも見え少しの艶冶もまとう。祖母として孫の成長を思う微笑ましく実感の句です。
江戸の世の童遊びや菖蒲打
しば
江戸時代に菖蒲で縄を作り地面を叩き音の大きさを競う子供の遊びで、今は地方に名残りが残るかも。また菖蒲は武士の勝負に因みことに男の子の無事の成長を祈り菖蒲湯、菖蒲刀、菖蒲葺くなどがある。
濡れそぼつあやめの潮来帰るかな
さゆり
原句に潮来を入れて景の見える詠にしました。花も山野も晴天の景と雨に濡れた景がありますが、あやめの花などは雨に濡れたのも少し曇り日に見るのも艶冶を込めて美しい。また山国の信濃などで雨後の晴間の山は格別で心も晴々とします。
水面にも風にもゆるるあやめかな
すみれ
あやめの花や花菖蒲は湿地の花だが田の様に水の中の植物ではありません、しかし水に映る花は美しいので近くに池などを配して観光にしています。その水に映るあやめもあやめ田の花も風にゆれて美しい句です。
紫陽花や花言葉はと問うてみむ
あお
紫陽花は七変化、刺繍花などとも言われ花言葉も多い、良い方は、元気、辛抱強い、結び付きで悪い方は、移り気、冷淡、無常など。昔に、シーボルトが日本で愛した楠本滝が辛抱強い女性であったので花言葉になった謂われもあります。面白い句です。
前川に浮ぶぼんぼり花あやめ
おおとも
原句は少し変えましたがこれで景の見える詠になります。潮来の前川沿いにはあやめ田があり六月の今が花の盛りで人出も多いし夜はぼんぼりに灯が入り趣があります。昔に、水戸光圀公が「潮来出島のまこもの中にあやめ咲くとはしをらしや」と詠まれてから有名になったとも。あやめの花はその名も花も古風な女性を想わせて床しい。
編み笠の乙女棹さす水芭蕉
コバ
水芭蕉は大きな葉と純白の花が印象的で尾瀬が名高い、六月頃水に映る姿は乙女に相応しく思えます。編み笠の娘船頭さんも余り見かけないが、潮来ではあやめ祭りに時々舟を漕ぐ、私に「あやめ売り声も面輪も笠の中」があり懐かしい句でもあります。
鹿島宮白鵬来る青葉風
ゆたか
白鵬はモンゴル出身の名横綱でその名も高い、その横綱が鹿島神宮に詣でるのも目出たい、杜の青葉風も明るく強く祝福の詠である。また神宮は古事記の国譲りの使いの建御雷神を祀り香取神宮、息栖神社と共に関東三社でもある