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俳句集

2014年2月の句

節分

選者 桐本石見

豆まくやはしゃぐ子供に逃げる父

ちーな

節分の豆撒きは「鬼やらい」「追儺」などとも云い、中国から伝わり昔は大晦日の宮中の儀式であった。今では神社寺院でも有名人を迎えて行うが、家庭にも広まり父親が鬼、子供が豆を撒く微笑ましい景となる。この詠も平凡ながら幸せ家族を彷彿する句です。

草餅の匂ひを連れて母来る

アベ

草餅と云えば蓬餅のことで三月にもなると堤防や畦に生える蓬を摘み餅に混ぜて搗く、薄緑の色も香りも良い。この詠は里の母が息子を訪ねて来られたのか、今では土産も多種あるが、搗き立ての草餅は何よりの母の土産だ。私の子供の頃も蓬摘みを手伝ったが故郷を思う懐かしい句です。

節分やいつも自分が鬼の役

コバ

家庭の豆撒きでは親が鬼、会社などでは下役が鬼になることが多い、節分になると何時も鬼の役をさせられる、少し不満を込めた詠ですがそれはそれで楽しい。映画などでも悪役、切られ役がありその悪役ぶりで劇も成り立つ。俳諧の面白い句です。

恵方巻きどちらを向きて食べよふか

イチ

恵方巻きは正規の俳句の季語ではありませんが、節分の夜にその年の恵方を向いて食べる長いままの巻寿司。平成十年にセブンイレブンが大阪で商品名として売出し全国に広まる。今年の恵方は東北東。発案者を思う面白い句です。

神宮の豆撒きいつもスター達

オノ

鬼やらいの儀式は古来からあるが今では神社寺院の宣伝的な行事になり有名人が豆撒きをする。私も一度特別に舞台へ上り豆撒きをしたことがありますが、有名人だけでなく一般の人にも役を譲っても良いかも。これも俳諧の句です。

節分やけふ温かき春の音

トリ

日本では春、夏、秋、冬と四度の節分があるのですが、寒い冬から春を迎える待ち遠しい思いや草木の芽吹きを待ち立春を一番に節分として祀る。今年の節分は温かく春の音を聞く様でもあった、しかし大雪の地方もある。待春の一句です。

春立つも雪の斑の鹿島郷

ユタカ

日本列島は南北に長いので立春と云っても菜の花の咲く所、積雪数メートルに及ぶ処もある。また太平洋側は二月三月に雪の降ることが多い。この鹿島も雪が降り斑に残る。実感の句です。

豆撒いて心の鬼を払ひけり

イルカ

今でも神楽や能には鬼や姫の面がありますが、そもそもその顔付きは想像ですが人の心の中を表しています。殺人鬼は恐ろしく姫様は優しく。豆を撒き先ずは自分の心に棲む鬼を追い払う。実感の句でいつも清らかな心に生きたいと願う。

遠き日に棲みし身の鬼豆を打つ

シュン

原句は少し変えましたがこれで過去の知らぬ間に自分に棲み着いた心の鬼へ豆を打ち追い払う句になります。子供の頃は素直な心ですが何時の間にか色々な鬼が棲み付き人生を狂わせる、一日でも早く退治したいものです。

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