2014年3月の句
卒業
選者 桐本石見
卒業の人波やがてセピア色
トム
卒業式が終り体育館などから人が校庭へ出てくると校庭もセピア色に染まる実感の景です。セピア色は茶褐色で昔の白黒写真が年月が経つと茶色に変色したので懐かしい思いを込めてこの名がある。卒業は思い出と次ぎの夢の出発の日でもある。
卒業や交わす握手の力瘤
コバ
卒業には各種学校の他にも修行的なものがあるが、何れにしても合格して共に喜びを分ち次ぎへ巣立つ日は感慨深い、握手の力瘤に男の友情が見え て清々しく又の会う日と健闘を誓う句でもあります。
卒業の心にしみる別れ歌
オノ
卒業式の最後には、仰げば尊し、蛍の光、などを歌う、中学高校の頃は清純でやはり胸にしみる、それが青春の証でもある。誰にも懐かしい句です。
鉛筆の下書きのまま卒業文
アベ
学校では卒業前に希望や感想を書かせて文集にする、その下書きを清書するつもりが締切りが迫りそのまま出す、誤字脱字、直したい文もある、しかしそれが今の本当の自分なのかも。感傷の籠る句です。
ゆめ夢の白線流し卒業す
カイジ
原句は白線流しのことと思い変えました。白線流しは岐阜県斐太高校の七十年前からの行事、男は学帽の白線女子はスカーフを繫ぎ卒業式の後大八賀川に流す。過ぎし夢未来の夢と絆を意味する。これは思い出の句かも。
卒業の釦が欲しい片思ひ
シマ
制服の釦を人に与えるのは戦中のことで映画化されて広まったとも。第一釦は自分、第二釦は妻や恋人へ、胸の近くの釦なので心を意味する。この「詠は女性側からの句で微笑ましくも切ない。