2021年11月の句
収穫祭
若き日の収穫祭のハシゴかな
オノ
収穫祭と言えば西洋っぽいが日本では秋祭、私の故郷島根では秋祭に神社へ神楽を奉納するので村毎に祭日をずらしていた。其の度に私は各地の神社に神楽を見に行った。祭には出店などもあり、若い人には出逢いの場でもある。隣町へ行くのも胸ときめく青春の思い出の句。
夕焼と田圃のけむり収穫祭
しま
田圃(たんぼ)の景色にも山国と水郷があり、夫々に趣きがありますが、今ではコンバインなどで収穫も終わり藁屑(わらくず)など燃やす煙が棚引くのも安らぎの景色。昔の藁塚など懐かしいが収穫祭を迎える夕焼の水郷も広々と静かで、豊かな稔(みのり)を彷彿する句。
日向路の神々いずる野焼きかな
ラク
日向国は今の宮崎県で天孫降臨の国、出雲の国と共に神話の郷。野焼きは早春に害虫駆除と茅などの育成に行い、焼畑農業の一環でもあった。比木(ひき)神社(宮崎県)の師走祭など火の祭も名高いが、土手や草原を焼く火にも神々を思う日向路の旅に相応しい句。
家までの壺焼き藷の温かさ
もり
私の家の近くの病院には最近まで焼藷屋(やきいもや)が来ていたので珍しさに買ったりもした、風の寒い日などは新聞紙に包んだ藷が温かく嬉しかった。子供の頃風呂焚きの手伝いで藷を焼いたのも思い出す懐かしい句。
るみの家みんな笑顔の収穫祭
ミニー
るみの家は女性専用の依存症回復施設で就労支援にも力を入れる。、今年の収穫祭は何が採れたのだろうか。女性陣だけに採れた野菜などで美味しい祭の料理が出来たのだろう。明るい句。
柿赤し見ていて実家思い出す
イワ
「里古(さとふ)りて柿の木持たぬ家もなし」(松尾芭蕉)と詠まれているように、柿は縄文時代からあり鎌倉時代に甘柿が発見され全国に広まった。句の作者の古郷は何処だろうか、私にも石見の郷や旅の信濃が懐かしい句。
収穫祭色とりどりの野菜かな
まこ
今では野菜も輸入などにより季節を問わず店に並ぶ物があるが、昔は旬の野菜が季節を告げたものである。それでも秋の薩摩芋、栗、豆類、蕪(かぶ)などの色は稲や柿なども含めて秋らしい彩で豊かさを思う。朝市など彷彿する句。
鬼怒川の鮎の放流旅に見て
みく
鮎釣の解禁は河川により異なるが五月末から六月初旬に行われる、それより二カ月前水温が十度を超える頃に稚鮎を放流する。時には子供達もイベントに参加して楽しい旅の一句。
隣り湯の声も高きや紅葉山
ゆたか
日本では湯治は四季に行うが紅葉を眺めての露天湯も格別、奥飛騨、草津、袋田の湯など夫々に趣きがある。その温泉から声が聞こえる、美人の湯など思う句。