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俳句集

2021年 4月の句

選者 桐本石見

桜舞ふ入学式の子供達

まこ

日本は南北に長く桜の咲くに遅速はあるが、この頃が卒業入学式転勤など別れと出会旅立の時期でもある。校庭の桜の花吹雪の中の卒業も入学も祝う様でメルヘンも思い小学生の元気な声も彷彿する句。

ウコン桜つひに求めき咲くを待つ

オノ

現この詠の桜は薄黄色の鬱金桜(うこんざくら)のことかも。今では桜と言えば染井吉野が一般的が、この変ったウコン桜の苗を漸く求めて今年は咲くかと待つ如何にも花を愛する句。因みに平安神宮は向って東を右近桜、西を左近の橘と言い、各地の神社ではこれに倣って右近桜、左近桜などあるので紛らわしい。

骨の友遥かつれ来し春襟裳

ゆたか

襟裳町は岬と昆布、歌謡でも名高く親潮黒潮の影響で霧や風の強い所でもある。今では鉄道も無いこの地へ友の遺骨を届けるのは格別の事情と思うが、遺骨が故郷へ帰るのはせめてもの幸せかも知れない。四月の襟裳岬は歌の様に遅い春かも、しみじみした追悼の句。

宮守と神宮一の桜見る

あべ

宮守は神宮などの社や境内を保全する人で何かと詳しい。その案内で神木とも言える古木の桜を見ているのか、何か由緒でもあるのかも。因みに鹿島神宮では幕末の志士佐久良東雄が奉納した桜の一部が今もあると言う。

幼児の手を引く道の桜かな

しま

桜の頃は大人も花見をするが、花日和には幼児も散歩などしたい。母親か御婆と公園など出掛ける。児は手を引張るほど元気だ。微笑ましい句。

卜伝の像や桜にウォーキング

ヒロ

塚原卜伝は五百年前の剣客で鹿島新當流(かしましんとうりゅう)の創始者、宮本武蔵との鍋蓋試合など名高い。像は鹿島神宮駅近くにある。桜の咲く道を卜伝像に元気づけられて走るのも現代的な明るい句。

花びらを肩に土産の花見かな

とら丸

花見も咲き始め、満開、花吹雪の頃と夫々に趣きがあり、また夜桜見物などして少しの花びらを着物に付けて帰るのも風情と言うもの。

いつの日かお内裏様になりたいね

とら丸

内裏は天皇の日常の生活の間の事でもあるが、男雛女雛の事にも言い、親王、内裏雛でもある。それになりたいと言うのは俳諧の夢の面白い句。

桜咲く寅兄さんは旅に出づ

クマ

寅兄さんは「男はつらいよ」の寅さんのこと。フーテンと言われる様に桜の頃は陽気に誘われて旅に出る、また哀しい恋の別れを重ねるかも。面白い句。

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