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俳句集

2020年3月の句

木の芽

選者 桐本石見

逞しや耐えし月日の木の芽かな

れいこ

日本には四季があり大方の木々は落葉し冬を耐える、北国では雪に埋もれ凍るけれども木の芯は生きて春に芽吹き花も咲かせる。日本の代表の花は桜だが都会で見るより北国に咲く山桜は葉も花も厳冬を耐えた美しさがあります。また人も苦難を越えて生きたいとも思う句です。

しんしんと木の芽湧き出づ雑木

政三

日本列島は南北に長いので地域差はありますが三月にもなると木や草の芽吹きがあります。ことに雑木山の芽吹きはいろいろな木の芽があり面白い。しんしんと静かに芽吹き、そして笑う様な葉になる。如実で面白い句です。

トンネルを抜けて抜けても山笑ふ

ゆたか

山笑う、は中国の書の臥遊録にあり、花咲き、霞たなびき、木々の芽吹く春山を言いう。川端康成にトンネルを出ると雪国と言う名文がありますが、この詠は如何にも春の山国の旅を彷彿する句です。

裸木となりて胸中何も無し

あべ

裸木は冬になり落葉した木のこと枯木とも言う。春や夏の葉のある時は木の種類や姿に夫々の威厳がある様に見えますが裸になれば人間に似て魂胆も無い様に見える。男同志の裸の付き合いを思う句です。

昨日今日木の芽ふくらむ散歩道

ひろ

木の芽には木の種類により色々なものがあり良く見ると面白いし花の蕾も趣きがあります。いつもの散歩道だが今日は日和も良く芽も開きそうに見える。心安らぐ実感の句です。

大子路や友と一緒の木の芽採り

おの

水戸市の奥の大子町は幕末の頃の軍学者田村賢者が久慈に湧く水は醍醐の味がするので大子町の名にしたとも。袋田の滝でも名高いが瀬音を聞きながら山菜や木の芽を採るのも楽しい句です。

たらの芽を皆がねらいぬ散歩道

しま

たらの木の芽は天ぷらにして美味しく蕗の薹なども合せて春の到来を思う野趣に富んだ山菜。まだ僅かな芽を誰もが狙う、明日か明々後日か。実感の面白い句です。

息づくやあちらこちらの新芽たち

レモン

この鹿島神栖ではそこらの散歩道でも木々の芽や草の芽吹きが見れます、良く見ると丸いもの尖ったもの、色も赤、黄、茶など様々で可愛い。新芽たちに、哀憐の思いの籠る句です。

北国の墓山木々も芽吹きかな

ゆーみん

北国と言えば青森、秋田、岩手県など思い積雪も多く春も遅いが四月も末には木々も芽吹く。帰郷しての墓参か、墓山と言う死者を葬る処にも草木は芽吹く、死と生の摂理を思う切々とした句。

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