2019年10月の句
さつま藷
茨城で古郷の味さつま藷
マー坊
句の作者の古郷は何処だろうか。薩摩藷(さつまいも)の産地は鹿児島、千葉、宮崎、徳島県が名高い。焼芋でも食べながら故郷を懐かしむ、古郷の味がする、しみじみした句。
酒を断ち今は甘党さつま藷
シゲ
昔は酒好きで今の人生がある。その好きな酒を断ち、甘党になって今後の人生を生きる。決意と少しの俳諧の哀れの篭る句です。
薩摩藷思い出すのよ終戦後
あべ
薩摩藷は江戸時代に沖縄から薩摩に伝わり、青木昆陽や井戸平左衛門等により救荒作物として全国に広められた。昭和の戦後の食糧難の時も都鄙(とひ、都市と地方のこと)を問わず藷飯やお粥で命を繫いだとも言える。焼藷、干藷と共に懐かしく、また苦難の昔を思う句です。
幼き日力まかせのお藷掘り
れいこ
秋になると幼稚園などでは近くの農家へ芋掘りに行く。農家の人があらかじめ下堀した畝(うね)の蔓(つる)を引っ張る。男の子か、元気な声が聞こえる微笑ましい句です。
さつま藷一かぶ抱ける園児かな
ユタカ
都会では特に田植や藷掘りが体験出来 ないので、バスなどで出掛けて芋掘りな どをする。農家の人に教わり芋掘りをす るが、蔓に連なる藷を全部抱えて来る園 児の姿も微笑ましい句です。
さつま藷焦げの苦さと実の甘さ
ヒロ
焼芋は皮が上手く剥(む)けるくらいに焼くのが良いが、案外に難しい。焦げは苦く中身は甘い、実感の句です。また広く言えば人の世も似たりかも。
焼芋は後の楽しみ落葉掃き
ブルー
今では落葉焚きも余り見掛けないが、昔は消防の規制も無かったので農家や寺の庭でも落葉焚きをして藷を焼くのが楽しみだった。懐かしい句です。
そろそろと石焼き芋の月日かな
おまっちゃん
立冬の声を聞くと石焼芋が懐かしいが、今は来ない。因みに焼芋屋は三百年前頃京都で始まり、大阪、江戸に広まったという。リヤカーは七十年前と伝わる。
茨城のブランド藷の紅あずま
オノ
昔は農林何号と言ったが、昭和六十年頃から如何にも美味しそうな名になった。紅あずまは茨城県の名産の一つ。因みに、姫あやか、紅こまち、鳴門金時、など二十種以上の名があると言われる。
焼芋に淋しき心ほっかほか
コバ
さつま藷は古来から庶民の救荒時の食べ物の思いがありますが、寒い時や気落ちの時に熱々の焼芋は身も心も温める。故郷の焼芋も懐かしい句です。
焼芋の香り漂ふ駅の前
キュウ
この駅は何処だろうか。駅前には各種の店が在り、その匂いも懐かしい、昼時や夕方には、その香りに誘われてつい立寄る。少し郊外の駅の昼下りを思う句です。
三才の息子がはしゃぐ芋掘り日
しま
幼稚園か或いは家族の藷掘り日か、天気も良く元気にはしゃぎながら出掛ける声が聞こえるような句で、前日もまた待ち遠しく楽しい。