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俳句集

2017年9月の句

稲刈り

選者 桐本石見

稲刈りにかり出されたる縁者かな

みく

昔の田植や稲刈りは集落や縁者が援け合って行った。機械化された今では少人数で間に合うが、それでも近くの縁者の援けを請うたのだ。何町歩もの稲刈りかも知れない。晴れた休日などの稲刈りの景を彷彿する句で子供の頃の手伝いも懐かしい。

貧農の五男に生れ稲を刈る

あべ

あまり良い言葉ではありませんが、貧乏人の子沢山、があり昔の郷の頃を思います。歴史からみても農村は貧農が多く、長男以外は何処かへ働きに出たものですが、五男が田畑の仕事をするのは特別の事情かも。また戦後は主人や長男を戦争で亡くした主婦や祖父母が難儀や苦労を超えて子育て農事に尽くした結果に今の日本があるとも言えます。切々の句です。

おだ掛けの大子の棚田稲を刈る

ゆたか

「おだ掛け」は稲架のことで茨城、千葉県の方言、また大子町は袋田の滝のある山間の人口一万七千余の町で、林檎や鮎が名高い。その山の町の棚田に稲架が準備され稲刈りがされている。私の郷を思う句でもあります。

稲刈りや朝な夕なの利根の風

くま

原句は少し変えましたが、これで利根川の風が稲穂になびく広い田の大景の句になります。また利根川は大河なので温度差で朝夕は良く風が吹きます。俳句は季語を一つにして景の見える様に詠むのも大事です。

稲刈りに揃し家族なつかしき

しま

世界の稲作は中国で一万年前、日本では三千五百年前頃から始まったとも言われ、その頃は家族や集落共同で田植えや稲刈りをしたと思える。現代は機械化で一人でも出来るが、テレビで見る様に家族で借りた田の稲刈りも楽しい。一句は昭和中頃までの田舎の思い出かもしれない。

稲刈りを眺めて思ふ故郷かな

ひろ

句の作者の故郷は何処だろうか、私の田舎は山国で棚田狭田が多く耕しも牛や鍬、稲刈りは手刈だった。小学四年にもなると農繁休暇があり手伝いもした。この広い水郷の稲刈りを眺めながら故郷を偲び自分を顧みる、しみじみした句です。

稲刈りの腰を伸ばすや遠筑波

こば

この水郷地帯は早場米の産地で筑波山、霞ヶ浦、利根川沿いは田園が広がる。植田の緑も美しいが、実った稲穂の波も秋の日に黄金色が眩しい。筑波山は歌垣の山とも言い関東の名山で今でも多くの人が訪ねる。晴れた日の稲刈りに腰を休めて遠き筑波山を眺めるのも心安らぐ。大景の句です。

稲刈るや手元に黄金たれ下がる

おの

今では機械で刈るのが多いが、それでも棚田や田の狭い処は鎌で刈る。刈った手元に黄金色の稲穂が垂れて重さを感じる実感の句で、子供の頃に手伝ったのが懐かしい句です。

稲刈りややった経験まるで無し

まこ

日本人であれば米は食べるが、大半の人は田植や稲刈りの経験は無い時代でもあります。また魚漁業、林業なども知らない人が多い。歳を重ねれば米の有難さやそれらを作る苦労にも思いをしたいものです。

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