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俳句集

2014年9月の句

選者 桐本石見

蝉時雨急き立てられて宿題す

蝉時雨の盛りの頃は子供達には夏休みの楽しい時でもあ るが盆を過ぎるとそろそろ宿題も気になる、親から残りの宿題を急かれる。高学年になると受験勉強に懸命だが小学 生には少し可愛そうな思いもある微笑ましい句です。

蝉時雨命七日を惜しみなく

コ バ

昔から蝉は短命だと云われるが、実際は地中の幼虫時代が 三から十余年、地上の成虫で二週間くらいらしい。蝉時雨は求愛の鳴声だが僅か半月は哀れで懸命でもある。それを聞きながら人間の世を思うしみじみとした句です。

子供らと神宮の森蝉捕りに

オ ノ

我家でも夏には蝉や甲虫捕りに付き合わされるが子供には思い出の一つでもある。この神宮は鹿島の森かも、杉木立の奥宮や要石辺りの道を子供と蝉を探して 歩くのも楽しく気取りの無い微笑ましい句です。

蝉時雨我は静かに里の昼

カツミ

原句は少し変えましたがこれで部屋の中や公園のベンチなどで静かに蝉時雨を聞く景の詠になります。 蝉時雨は喧しくもあり、よく聞くと息遣いや声音も違い風趣もあります。

仮の地が終の地となり蝉時雨

ショウイチ

幕末の頃、現山口県柳井市の妙円寺の月性和尚の漢詩に、「男児立志出郷関、、、中略、、、、人間到処有青山」があり現代も転勤や会社の移転など生地より他郷の生活が多い、蝉時雨を聞きながら郷の事やここを最後の地とも思う切々たる句で、私に「青山と名為さむ神栖野桐の花」があります。

秋の富士我家で見れば四角いよ

レイナ

富士山は三保の松原と共に世界遺産に登録されこの 辺りから眺めるのが四季を通じて美しいとされる。その富士山も作者の故郷の家からは四角に見える、何事もそうだが全てが美しくはない、俳諧の面白い句です。

鹿島宮入りて奥なる蝉の声

アベ

鹿島神宮は神武天皇の御代に創建され、祭神は武甕槌大神で大国主神との国譲りで名高い。今は奥宮までの杉木立の道を漫ろゐながら蝉の声を聞く、秋近くには昼でも蜩などが鳴いて杜の深さに涼しさを思う句です。

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