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俳句集

2022年02月の句

炬燵(こたつ)

選者 桐本石見

気の付けば家族の揃ふ炬燵かな

まこ

炬燵(こたつ)は日本の暖房器具の一つで室町時代に考案されたと言い堀炬燵と置炬燵がある。熱源も炭、練炭から電気式になったが、布団に炬燵板を乗せるのは今も同じ。その炬燵を囲み食事や談話をするのは楽しい、何時の間か子等も帰り、家族が揃う。日本の家庭の代表の様な景の句で、心も和み郷も懐かしい。

老人会炬燵に青春(はる)を咲かせおり

ラク

日本の六十五歳以上の人口は三千六百四十万人と言われ、医療や年金問題にもなるが、働く人も多い。時には集まって、若い日の思い出に花を咲かすのも良い。炬燵を囲み、一杯やりながらの元気な顔を彷彿する明るい句。

温もりの転寝さそふ炬燵かな

ヒロ

今の炬燵は大方が電気式で温度調節も自在だが、それでも炬燵の温もりは緩やかで、身体全体が温もると眠くなる。ことに一人での午後などにはうとうとするが、これも炬燵の良さで老いの楽しみの一つ。実感の句。

新婚や炬燵の中も手をつなぐ

トラマル

特別に選評も要しないほど鮮明な詠で、自宅よりも他人の家を尋ねたときかも。あるいは句の作者の思い出かも。有史以来、恋にはいろいろな形があり、その時その場所に於いて人生の思い出でもあり美しい。

肩寒し出るに出られぬ炬燵かな

ぴる

炬燵は一般には腰から下を温めるので、特に寒い日は肩や背の辺りは寒く、なかなか炬燵から離れにくい。今ではファンヒーターなどがあり、直ぐに温もる。この詠も老いを思う実感の句。

足と足炬燵の中の場所取りだ

めい

炬燵が今の様に上部加熱式になったのは、昭和の初め頃とも言われる。足を伸ばせるが、炬燵の大きさや家族の人数に因っては足が邪魔になる。子供の頃足が当たって喧嘩したり、恋の芽生えも懐かしい句。

懐かしむかくれんぼせし掘炬燵

えび

掘炬燵は、床より下に掘り下げるので椅子に座る様で楽であり、夏でもテーブル代わりに出来る。今は電気の熱源だが、昔は炭火や豆炭などだった。子の日が懐かしい句。

真中に炬燵据えたり大座敷

あべ

大座敷と言えば、寺や旅館を思いますが、私の田舎の農家も大座敷で炬燵や大火鉢があった。夜は大人が花札をしたり、酒に時を過ごし、子供は寝転んで本など読んだ。如何にも大座敷を彷彿する句で、郷が懐かしい。

トランプも子等も懐かし掘炬燵

オノ

今はテレビやスマホなどあり、子供達もそちらに夢中だが、昔は蜜柑(みかん)を食べながらのトランプなどが、正月や休日の遊びでもあった。雪の故郷も思う一句で懐かしい。

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