薬物依存症、アルコール依存症からの回復をサポートするリハビリテーション施設 潮騒ジョブトレーニングセンター

俳句集

2021年 9月の句

選者 桐本石見

虫の声故郷訛りも懐かしき

アベ

虫の声と言えば鈴虫松虫を思うが、蟋蟀(こおろぎ)やキリギリス、バッタなど懐かしく、中でも蟋蟀は家の近くや藪にいて親しく鳴き声もどこか里訛りを思う。私の故郷は出雲のズーズー弁で東北弁にも似る。面白く故郷の秋の夜を彷彿する句。

朝露を踏んで親子の栗拾ひ

ラク

栗拾いは果樹園と里山や雑木山で行うのがあるが、ことに里山などは朝早く他人が来ない内に拾うのが楽しい。この鹿島潮来の山にはまだ柴栗もあり、親子で露の道を出掛けたのか。明るく楽しく懐かしい句。

虫たちの音色いつしか子守唄

みく

鹿島神栖の夜も更けるといろいろな虫の声が聞こえる。我家の窓辺近くも草叢(くさむら)なので時には鈴虫の音も聞けて、歳を重ねた今改めて風情に浸りますが、聞き入ると闇の中を漫(そぞ)ろ歩く思いにもなり、やがて眠たくもなり子守唄にも思う。一人の夜更けを彷彿する句。

茹で栗を剥くや偲ばる郷の祖母

ラク

栗は焼いても茹でても美味く子供の頃は好きなお八つでもあって栗拾いにも多くいった。それを祖母や母が茹でたり勝栗にしてくれた。今は買うのが多いが皮を剥く度に祖母を思う懐かしい句。

涼やかに虫の声聞く喫煙所

しま

鈴虫の聞ゆる外の喫煙所

ひーちゃん

喫煙は今では他人の迷惑とのことで特定の場所に指定されているが、この詠の場所は外で草叢にも近く鈴虫の音が聞こえる、これも一人の一時の幸せかも。

晴天やイナゴ飛び交ふ田んぼ道

オノ

イナゴは稲の害虫だが昔は佃煮などにした、露の朝や雨後に羽が濡れてイナゴが飛び辛い時に捕ったり晴天の下校時の縄手道に跳ねるイナゴも懐かしい句。

夕焼けにかくれんぼかな赤蜻蛉

えび

童謡にもある赤蜻蛉には、秋茜、深山茜、眉立茜、のしめ蜻蛉などの種類がいて深山茜が一番紅い。夕焼けに群れ飛ぶ茜蜻蛉は少しの淋しさも思うが隠れん坊と言うのも童話のメルヘンも思う句。

散歩道藪の中なる虫の声

ヒロ

秋の虫は夕方から夜に鳴くのが多いが蟋蟀などは昼の暗い所でも鳴く。静かな散歩道で夕月を見ながら虫の音を聞くのは嬉しく、ことに松虫や鈴虫の音なら心和む風情の句でもあります。

一人居て静かな闇に虫の声

れいこ

「夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこほろぎ鳴くも」など万葉の時代から日本人は虫の音や月を愛でた。灯を消して静かな部屋に遠近の虫の声を聞くのも風情と言うもので少しの艶冶も思う句。

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