2019年4月の句
ひな祭り
癒さるる赤子のほっぺ桃の花
ゆうこ
「銀も金も玉も何せむに優れる宝子にしかめやも」(山上憶良)が万葉集にありますが、何時の時代も子や孫は可愛い。赤子のほっぺを見ていると触れたくもなる。眠る姿も笑む姿も癒される。桃の花も明るく微笑ましい句です。
幼な日のかんざしにして桃の花
れいこ
人の心は字の様に水に浮く小舟の様でもあり、感情とも言うが、色彩にも心が動く。空の青、草木の緑などには安らぎ、黒や血などにはおののく。畑や堤防などに咲く菜の花をしばし眺めていると、心安らぎ我ながら微笑む。日常のことながら、人間も含め大自然の不思議と摂理を思う句です。
信濃路の峰々晴れて桃の花
ヒロ
桃には食用桃と花を見る花桃があり、信濃にはどちらもある。花桃は国道256線の妻籠、清内路、昼神温泉に一万本が咲く。実桃は飯網町丹雲郷などあり、戸隠、黒姫、妙高の峰々の残雪とのコントラストも美しい。また千曲市の倉科、森地区の杏の花も桃源郷として名高い。昔尋ねて私にも懐かしい句です。
朝まだき古河へ遠出の桃祭
オノ
古河市の桃祭は江戸時代初期、土井利勝が藩主の時に江戸で子供に桃の種を拾わせ、古河の農民に送り育てさせたのが始まりという。今は、矢口、源平、寿星、寒白、菊桃の五種千五百本が咲くという。朝早くから出掛けた旅の如実の思いの句です。
愛おしや君の笑顔も桃の花
アオ
男性には恋人や好きな女性の笑顔は何より嬉しく元気も湧く。古来から和歌に歌謡に俳句にも詠われたが尽きることはなく、未来永劫恋の歌は続き、その時の当人は胸をときめかせる。この詠も桃の花が明るくて微笑ましい。
山もまた川も心も桃の花
アベ
桃は中国黄河上流が原産地で、日本へは縄文時代に伝わったとも。昔は薬用や、魔除けに用いたが、江戸時代に改良されて食用にもなった。日本一生産の多い山梨県などは当に山も川も桃の花盛りの桃源郷の思いになる旅の句です。
まぼろしの太郎もそこに桃の花
くみ
おとぎ話の桃太郎は孝霊天皇の御代に今の岡山県吉備津を平定した、吉備津彦命、稚武彦命の史実を元に室町時代に出来たとも。今では漫画やアニメがあるが、昔の人も何かと考えて子供達に話したのかも。桃の花に太郎や我が子思う句です。
合席の話のはずむ和布和え
ゆたか
合席は居酒屋などで見知らぬ人と同席することで、混んでいる時などにはバスや電車も同じかも。和布和えは和布に蛸など合えた酢の物。合席で始めは遠慮勝ちだが、同郷や仕事で思はず話が合う、東京などは多くは地方からの人が多いのでこの様な光景もあり懐かしい句です。
駆けっこの足のもつれや草萌ゆる
ゆたか
三月にもなって暖かくなると子供達は公園などで元気に走り回る。親もつられて追いかけるが、子の早やさに足ももつれる。また運動会などでも何かの競技に出るが転ぶのも多い。つくづく齢を思うのもこの時です。少しの哀れも思う句です。